阪神淡路大震災から20年
過去を振り返るとき、音楽の持つ、感情の記憶力を思い知らされます。
たまたま私の耳に聞こえてきたその音楽が、たまたまそこにあった日常を、吸い取り紙のようにすくい取り、消えていくはずの感情がそこに残ります。
その音楽を聴いていた、何気ない日々の延長線上に、1月17日がありました。
Mr.Childrenの『everybody goes』、小沢健二の『ラブリー』、そして『カローラⅡに乗って』などは、震災から数年は聴くことができなくなりました。
当時の恐怖と悲嘆を、写し取ってしまったからです。
『ラブリー』の最後に連呼される、「Life is comin' back!」が、「命よ、戻ってこい!」に聞こえてしまい、心が締め付けられる思いになりました。
そして、やはり同じように当時の感情を記憶した曲があります。
沢田研二さんの『ひとりぼっちのバラード』です。
この曲は1969年発売のアルバムの曲ですが、中古レコードを探していて、たまたまその時期にやっと入手して聴いていたものでした。
1月17日の午後、私は家族で車で移動中でした。
大阪府内でしたが、道路は凄まじい渋滞でした。
家族がカーラジオをつけていましたが、流れてくるのは、防災情報と、途切れることのない犠牲者のお名前でした。
本当に、途切れることなくただ延々と、お一人お一人違うお名前が…堪えられなくなりました。
心を平常に近付けたくて、持っていた携帯音楽プレーヤーを再生しました。
~ すべて すべて移りすぎゆく
なにか はかり知れぬちからで
僕は 僕はおし流されて
そしていつかは終わる ~
~ たった一度の人生だから
力の限り 明日を捜そう ~
~ いつも いつも傷つきながら
愛を 愛を失いながら
生きて 生きていくこの命
そしていつかは終わる ~
人生は無常だ、と言われているようなこの歌詞に、私は共感とやりきれなさを同時に感じていました。
20年が経ち、この歌詞の言っていることはやはり真実だったのだと納得する自分がいます。
大切な人やものをこのような形で奪われた私たちにできることは、
その痛みから学ぶこと、
失ってもなお生きること、
大切な人やもののことを忘れないこと、
これに尽きるのではないかと思います。